「風邪ではないのに喉がイガイガする、違和感がある、声が出しにくい…」
こんなこと経験はありませんか?
東洋医学ではこういった喉の不調を、梅の種が喉につまったような感覚で咳払いをしても出てこないという表現から『梅核気(ばいかくき)』といい、西洋医学では「喉頭異常感症」と呼ばれます。
この『梅核気』、主な原因は「気滞(きたい)」という、気の巡りが停滞してしまう体の状態、とされています。
この「気滞」が発生してしまう主な原因は
- 精神的ストレス→感情の異常・偏った変化:怒り・不安・悲しみなど
- 環境的ストレス→季節の変わり目、猛暑、冷えなど
- 食事の不摂生
などがあります。
『梅核気』といった症状の他にも「気滞」は
- 呼吸が浅く息苦しい
- 張ったような体の痛み(腹の膨満感、体の痛み肩こり・腰痛)
- イライラしやすい、ヒステリーになりやすい
- 便秘あるいは残便感(便が出てもすっきりしない)
- げっぷ・おならが出やすい
- 経血がドロっと塊で出やすい(血のめぐりも悪くなる)
などの不調・変調を引き起こします。
また気の流れが停滞すれば、その後遺症のように二次的に血の巡りも滞ってしまいます。
東洋医学ではこれを「瘀血(おけつ)」と呼んでいます。その名の通り、血に関する不調や変調が発生します。(例:婦人科疾患、冷え性、貧血など)
今回のテーマのひとつ『梅核気』は特に精神的なストレスが過度にかかった場合に起こりやすく、日頃からストレスを溜めやすい人・がまんしやすい・気をつかいやすい、という方は要注意です。
症状がでているのは、体がもう限界だ!と教えてくれている黄信号です。
そのサインを出す前に、また赤信号のような慢性化・病気を引き起こす状態になる前に自分の心身を手当てしていきましょう♪
目次
喉の不調に対してのセルフケア
まずは梅核気の症状を感じている、喉。患部のケアです。
おすすめのツボ
『天突(てんとつ)』
胸の前にあり、左右の鎖骨をむすんだ中央の窪み
違和感、痛みなどの喉の諸症状に効果的です。定咳去痰とよばれ、痰が絡む咳にお困りの方にもおすすめです。
『人迎(じんげい)』
首の前側、喉仏から指2本分外側にあり、拍動がかんじられるところ
血圧の調整、物が飲み込みにくい、声が枯れる(嗄声)などにも良いです。
『陽渓(ようけい)』
手首にあり、親指を手の甲側にそらすとできる三角形の窪み
喉周りをながれる経絡にあるツボのため、経絡の滞りを解消し喉の違和感を緩和します。咳を鎮め、寒熱のバランスを整えます。
「気滞」症状を緩和するセルフケア
梅核気症状を引き起こしている根本の原因である、『気の停滞』を緩和・改善するセルフケアです。
ストレスを緩和し、怒・悲・憂・驚の感情をやわらげます。
おすすめのツボ
『太衝(たいしょう)』
足の甲にあり、親指と人差し指の骨の間に指を滑らせ止まるところ。心臓の拍動が感じられます。
高ぶった気を鎮静させ、痛みを和らげます。怒りを司る、肝のツボです。精神的ストレスが多い方におすすめです。のぼせ、めまい、不眠、婦人科の悩みにも良いです。
『期門(きもん)』
肋骨の下、乳頭から指4〜5本分まっすぐ下に下がったところ
こちらも太衝と同じく、肝のツボです。お腹の肋骨の下を押すとかたく息苦しい方は、心身の緊張が強く交感神経が優位なことが多いです。
『足三里(あしさんり)』
すねの外側、膝の骨の下の窪みから下へ4本下がったところ
胃のツボになますが、万能のツボです。胃腸機能を高めることで気血を補い、全身のめぐりをよくします。疲労回復にも効果的です。余計な水分(むくみ)を流すはたらきもあります。
ストレスを緩和させ、自分自身でやさしい環境にしていくこと
呼吸法
自律神経は私たちが生きていくために生理機能を維持させている無意識下で動く神経です。
ですから、筋肉の動きのように自分でコントロールできない神経ではありますが、唯一自律神経のはたらきに触れることができるのが呼吸です。呼吸を行うことで動く、横隔膜。この横隔膜には自律神経が密集しているのです。
- 吸う時は交感神経(アクセル)
- 吐く時は副交感神経(ブレーキ)
が優位に働きます。
ストレスフルで自律神経が乱れがちな現代人に多いのが息を吸いすぎていること。つまり自分の呼吸までも、自分自身を緊張状態に導いてしまっています。
よく落ち着きたいときに深呼吸をして!と言われたことはありませんか?ですがぜひオススメしたいのは、『息を吐くこと』。
落ち着きたいときにおすすめの呼吸法
- お腹を凹ませるほど、自分の息を吐ききる
- 息を吐ききって、入ってくる分の息を吸う
- ①に同じく、お腹を凹ませるよう、息を吐き切る
- ①〜③を2〜3回繰りかえし、呼吸のコントロールを手放し通常の呼吸に切り替える
息を吸うときに、鎖骨が上がったり、鳩胸のように胸がはったり、反り腰のかたは横隔膜を使って呼吸が上手にできていない証拠です。
まずは、呼吸でお腹を使うことを知ってみる。
そのコントロールだけでも、自律神経を安定させ、マインドフルネス(心を今に向ける)な状態に自分を導くことができます。
見方を変えてみる
人間関係・季節の変化・コロナ禍…自分の力では急にどうすることもできないものもあります。
「ただし状況に嘆くよりも、その状況をどう捉えるのか。」
見方をかえるだけで、感じるストレスの度合いが変わることがあります。
たとえば、3分の2ほど水の入ったコップがあったとします
- 3分の2しか水がはいっていない
- 3分の2も水が入っている
前者と後者では、幸福度の違いがかわりませんか?
自粛だから今日しか友達に会えない!自粛だけど今日は友達に会えた!
ネガティブをポジティブに変えて生きながら、今この瞬間の喜びや幸せに気づくことができるかもしれません。
ただし、どんなに頑張ってもポジティブに考えられない時もあると思います。そんな時はポジティブに考えられない自分を責めるのではなく、そんな自分を受け入れて休息をとるのがおすすめです。
運動
当たり前のことですが、運動は筋肉が動きます。筋肉は全身の血液を循環させるポンプの役割を果たします。
運動不足は全身の血の巡りを停滞させ、必要な酸素・栄養を運べず、さらに老廃物を溜め込む原因にもなります。
ただし結果を求めて、急激に激しい運動を行うことは自律神経を整えるという意味ではおすすめできません。
ランニングや負荷のかかる運動は交感神経を優位にさせ、バランスが乱れやすくなります。
オススメしたいのは、ウォーキングなどのあえての軽い運動。
ここでも意識したいのが、ゆっくりと深い呼吸です。体が暖まり、血流がよくなる程度の軽い運動を行うことが自律神経を整えることに効果的です。
『心身相関』:わたしたちの心と体はつながっている
東洋医学は心身一体をとなえ、古くから発展してきた医学です。
そして現代医学でも、名古屋大学の研究にて脳の中で情動(感情)を処理する領域と体を調整する領域をつなぐ『心身相関』の神経伝達路が見つかっています。
「病は気から」という言葉が現代医学でも解明されつつあるんです。
今回のテーマである「梅核気」も対症療法だけでは一時的によくなることはあっても、その原因がなくならない限り繰り返したり、慢性化してしまい治癒までに時間がかかってしまうことも考えられます。
体の不調に悩む時期は、誰もが辛いこと。ですが、体の不調によって、自分自身を見つめなおす時期かもしれません。
気血の巡りを促し、澄んだ深い呼吸をして、その喉からみなさんの美しい声が聞こえることを願っています。